2005年9月(第4回)韓国平生学習フェスティバル
 国際シンポジウム
 
        −参加記録
(「南の風」記事等より・小林文人ほか)-




韓国・第4回平生学習フェスティバルの開幕(野外ステージ、光明市、2005年9月23日)


(1)韓国「全国生涯学習フェスティバル」への参加(小林文人)
 今年の韓国「全国生涯学習フェスティバル」は9月下旬、ソウル郊外の光明市で開かれることになったそうです。その開幕の日に企画される国際学術シンポジウムに(今年も)日本からの登壇が求められ、このほど小林宛の招聘状が届きました。昨年は、川崎の伊藤長和さんが「川崎の市民大学」について発表された経過があります。
 以下、小田切督剛さんの翻訳による招聘状とプログラムをご紹介いたします。風1503号の伊藤さんメールによれば、この機会に訪韓団を組織しようという計画があるようです。なお、以下文中の「平生学習」は日本の生涯学習、「教育人的資源部」は文部科学省、にあたります。(南の風1510号 2005年8月7日)


(2)光明市・平生学習院からの招聘状 (小田切督剛・訳)
 8月5日、光明市平生学習院のイ・ビョンゴン院長(聖公会大学校教授)からメールが届きました。メールにはご本人のサイン入りの手紙が添付されていました。それを翻訳したのが下記ファイルです。内容はさまざまですが、「8月25日(木)までにA4で7〜8枚の原稿をお願いしたい」との内容が含まれています。テーマは仮題「日本の市民社会での人的資産開発が持つ意味と地域革新」です。…(以下、略)…
★<イ・ビョンゴン院長より小林文人宛の書簡>
 アンニョンハシムニカ? 私は韓国の聖公会大学校で教育学を教えているイ・ビョンゴンと申します。伊藤館長と小田切さんの紹介で小林先生を知ることとなり、お手紙をお送りします。このように書状を通じてご挨拶申し上げることができ、光栄に存じます。
 まず、伊藤館長のお勧めを受けて、京畿道(キョンギド)光明市(クァンミョンシ)での「第4回全国平生学習フェスティバル」の一環として開催される国際学術シンポジウムでの発表をご快諾いただいたことに、深く感謝申し上げます。既にご存知のこととは思いますが、私たち聖公会大学校と光明市の関係について簡略に紹介させていただきます。
 光明市は、韓国の首都ソウルの西南部に隣接する衛星都市であり、34万の市民たちが生活している新生都市です。この都市を教育・文化・福祉のレベルからよみがえらせようとペク・チェヒョン市長は去る1999年に我が国で初めて「平生学習都市」を宣言し、その理念を実現するための中枢として「光明市平生学習院」を設立した後、私たち聖公会大学校に機関の運営を委託し、現在に至っております。
 ごく短い年月ではありますが、「光明市平生学習院」は平生学習都市としてのインフラを備えるための政策の樹立と実行、地域社会に合った教育プログラムの開発と運営などで、国内の平生学習関係者たちから非常に関心を集めてきました。そうした中、2005年には教育人的資源部が毎年主催してきた「全国平生学習フェスティバル」の開催都市に光明市を指定し、私たちは現在まで行事の成功的な開催に向けて最善を尽くしております。
 今回小林先生にお越しいただくことになった国際学術シンポジウムは「未来に向けた約束、人間中心の平生学習社会」というテーマのもとに、「人的資産に対する観点の転換」を模索するために企画されました。これまで数十年間、韓国での平生学習と関連した論議は、経済的成長と発展、企業の人材需要ニーズに合わせた狭いHRD理論に傾倒してきたため、地域社会で求められる価値のある人的資産の豊かな意味に対する関心が、相対的に非常に低かったというのが事実です。
 しかし、ちょうど鳥が両の翼で蒼空を飛翔するように、未来の平生学習分野は、市場経済の領域と非市場経済の領域のすべてに渡り、人的資産を豊かに育て上げてこそ、はじめて望ましい人間中心の平生学習社会を創りあげることができる、という点は明らかであると考えます。こうした観点から、小林先生が日本の市民社会での人的資産の開発のために努力してこられた豊かな実践事例と、現在論議されている争点、そして今後の展望などについて韓国社会にご紹介いただける発表文を作成していただけるようお願い申し上げます。先生の発表文の題名は私たちが仮に考えてみましたが、「日本の市民社会での人的資産開発が持つ意味と地域革新」です。
 添付させていただいた資料の日程表をご覧いただければおわかりになると思いますが、今回のシンポジウムはアメリカと日本、そして韓国での人的資産開発をめぐる論議がどのように展開されてきたかを点検する契機となるでしょう。また韓国国内のさまざまな専門家たちと実践家たちに、人的資産の豊かな価値に対する新たな研究方向と思惟の対象を投げかける斬新な学術大会になることと思います。
 …(中略)… 開催日が近づき、充分な執筆時間を差し上げることができない点を本当に申し訳なく思っています。先生の発表時間は午後2時30分から3時20分までの50分間です。日本語からの同時通訳を通じて聴衆に発表内容を直接伝える予定です。
 また、この日シンポジウムがすべて終わった後には、約2時間の休憩時間を持ち、近くにあります室内体育館前芝生広場へ会場を移し、「第4回全国平生学習フェスティバル開幕式」に参加されることもできます。日本の社会教育分野で長い間活動してこられた先生が、韓国の平生教育の現場をご覧になれる興味深い経験になることと思います。…(中略)… 
 最後にもう一度、先生の発表受諾に深く感謝を申し上げ、直接お会いしご挨拶を申し上げる日をお待ちしております。韓国は現在、暑さが真っ盛りです。夏の間の先生のご健康をお祈り申し上げながら筆を置きます。カムサハムニダ。 大韓民国・光明市にて イ・ビョンゴン拝
○平生学習フェスティバル国際学術シンポジウム
1 事業名:第4回全国平生学習フェスティバル国際学術シンポジウム
2 テーマ:未来に向けた約束、「人間中心の平生学習社会」
       〜人的資産に対する観点の転換のために〜
3 日 時:2005年9月23日(金)午前10時〜午後5時30分
4 会 場:光明(クァンミョン)市平生学習院 2階 大ホール
5 主 催:教育人的資源部
6 主 管:韓国教育開発院、ニューパラダイムセンター、光明市
7 内 容:
(1)開会式 10:00〜10:30
(2)基調報告 10:30〜12:00
 「人的財産の意味を改めて見る『もう、無駄な人間などいない』」
  Edgar S. Cahn(米国District of Columbia大学教授、「タイムダラー」設立者
(3)昼食 12:00〜13:30
(4)セッション1 13:30〜14:50
 「産業社会における人的資産開発の事例と今後の方向」
   ムン・グッキョン(ユハンキンバリー代表理事)
   シン・ボンホ(ニューパラダイムセンター所長)
(5)セッション2 15:00〜15:40
 「市民社会における人的資産開発の事例と今後の方向」(仮題)
   (この部分の発表をお願いします)
(6)セッション3 15:50〜16:30
 「韓国平生学習の人的資産開発のための政策的提言」
  クォン・デボン(高麗大学校教育大学院院長、韓国平生教育学会会長)
(7)総合討論 16:40〜17:30
  ※総合討論終了後、開幕式へ:光明市室内体育館で開催  (南の風1510号 2005年8月7日)

光明市平生学習院(050923)



(3)韓国・光明市・富川市・訪問計画
(伊藤長和)
 韓国の「第4回全国生涯学習フェスティバル」への参加と、光明市、富川市の調査研究旅行の日程案をお知らせ申し上げます。詳細日程は、韓国側と調整して決定しますが、先生方でご希望がございましたら、お知らせ下さい。先方に依頼します。
 なお、往復の航空券は、日本が連休ということもあり、取得が困難ということで、事務局(小田切督剛さん)で既に仮予約しております。小田切督剛さんは川崎市の職員で社会教育学会の会員でもあり、韓国語は同時通訳ができます。
 訪問団ですが、チケットの仮予約は10人分です。他にお誘いできる人がいらっしゃれば、至急ご連絡お願いします。スケジュール案については、添付ファイル(下記・要約)でご案内させていただきます。 
○韓国訪問日程案(9月22日〜26日)
9月22日(木)12:00:羽田発→金浦(アシアナ:Z1015)富川市民グループと懇談
  23日(金)韓国生涯学習フエスティバル・国際シンポジウム(小林・シンポジスト)
  24日(土)富川市・駅谷1洞事務所・住民自治センター・文化院・文化の家等訪問
  25日(日)エクスカーション、韓国本(コアグループ)編集会議
  26日(月)ソウル大学日本研究所、帰国 15:50:金浦発→羽田  (南の風1519号 2005年8月23日)


(4)地域通貨「タイムダラー」(小林文人)
 9月23日、韓国・光明市(ソウルの隣り)で開かれる「生涯学習フェスティバル」の国際シンポ、基調講演のエドガー・カーン博士(米国、弁護士、元公民権運動家)は、地域通貨「タイムダラー」の創始者。その支援を受けて、日本でも松山市を拠点に「NPO法人タイムダラー・ネットワーク・ジャパン」が賑やかに活動を展開しているようです。
 → http://www.timedollar.or.jp/index.html
 ちなみに、カーン氏の著作は『この世の中に役に立たない人はいない―信頼の地域通貨・タイムダラーの挑戦 − コ・プロダクションのすすめ』(創風社出版、2002年)として邦訳されています。
 日本では「地域通貨」は、生涯学習の関連であまり話題になってこない。たとえば社全協・全国集会などでもきちんとした報告はありません。しかし、ドイツ・ハンブルクの社会文化運動との交流の際にもテーマの一つになっていたようだし、韓国の平生(生涯)教育関係者が地域通貨に強い関心をもっていることは知っていました。今回の国際シンポ基調講演テーマが「タイムダラー」に関連していることも、その課題意識からでしょうか。この機会に、すこし勉強したい、と思っています。そんなときに、横浜・磯子の市民たちが「地域通貨」に取り組もうとされている動き(上記・メールマナビン384)に出会ったのです。
 日本からの小林「国際シンポ」報告は、「公民館」に焦点をあてて話してみようと考え、発表案を草して送りました。小田切督剛さんがハングル訳。しかし基調講演(タイムダラー)とどうもかみあわないらしい。追加のコメント文を求められました。 (南の風1524号 2005年9月4日)

左端:タイムダラー創設者・Edgar S. Cahnさん (米国District of Columbia大学教授).、4人目に小林(20050923)



(5)再び「タイムダラー」について(小林文人)
 やはりインターネットの世界は、座ったままで新しい動きを手にすることができる。かねて地域実証主義を口にしてきたものとしては、複雑な思い。松本・神田町会HPに引き続いて、風1524号に紹介した「NPO法人タイムダラー・ネットワーク・ジャパン」HPをのぞいてみました。→ http://www.timedollar.or.jp/index.html
 「タイムダラーは、助け合いのサービス1時間を1点と定め,お互いの能力と時間を会員の間で交換する新しいカタチの互助システムです。「No More Throw-Away People」(この世の中に役に立たない人はいない)との理念で、地域で埋もれている人のパワーを掘り起こし、地域の再構築をしましょうとの運動で、一方的な奉仕活動ではありません。
 仕組みは簡単です。会員間でできること、してもらいたいことを話し合って合意のもと作られたサービス・メニューをコーディネーターの仲介で交換し合います。点数は貯めることをしないで、できるだけ会員間で活発に使えるよう日常生活で使える楽しいメニューを考えるといいと思います。」
 「タイムダラー」の創始者エドガー・カーン氏の発想には、コ・プロダクション(協働で生産する)の概念、あるいは「コア経済」、それと関連して「ソーシャル・キャピタル」などがキーワード。カーン氏の著作『この世の中に役に立たない人はいない』の紹介から。
 「中でも強調されているのは、市場経済が健全に機能することを背後から支えるコア経済(非市場経済)の存在です。コア経済とは、家事、育児、近隣での助け合い、コミュニティなどで、平等、相互扶助、思いやりによって組み立てられたこの“新しい経済”の必要性を米国各地での事例に基づいて述べられています。
 そこでは、市場経済とコア経済の関係が上手く機能してこなかった理由を、通常の貨幣しか介在しなかったからだと指摘しており、そこにタイムダラーを介在させることで、社会の底辺から信頼を取り戻し、コミュニティの再構築が可能になることが明らかにされています。」という。
 さて、あらためて日本的(東アジア的)な集落の自治や相互扶助(結い、ユイマール、手間替えなど)の機能と、世界的潮流?となっている感じの現代的「地域通貨」発想、その関連などを考えさせられています。  (南の風1526号 2005年9月8日)


(6)韓国(平生学習フェスティバル)から帰って(小林文人)
 韓国へ9月22日出発、26日帰国の羽田−金浦便で、予定通り、昨夜帰ってきました。今回もパソコンを持参しませんでしたので、風は5日間のご無沙汰。皆さんは静かな夜?を過ごされたのでは。この程度の間隔での「風」の吹き方が本来いいのかも知れませんね。しかし留守中に頂いているメールあり、また韓国行きもいろいろと話題満載。また隔日原則で吹き始めることになりそうです。ご容赦ください。
 韓国へ持参した第10号・10冊(江頭晃子さんが修正シールを貼ったもの)は、伊藤長和さんとともに執筆者に渡し、関係機関等に贈呈してきました。  
 今回の韓国の旅は、光明市で開かれた「第4回・全国平生(生涯)学習フェスティバル」への参加、合わせて富川(ぷちょん)市の生涯学習センターや住民自治センター・文化の家等を訪問しようというもの。フェスティバル開幕当日に開かれた国際シンポジウムには小林が招聘され、日本の公民館について報告する機会に恵まれました。
 同行は、川崎から伊藤長和、小田切督剛のお二人、手打明敏(筑波大学)、浅野かおる(福島大学)、金命貞(東大大学院、小林報告通訳)の皆さん、たいへんお疲れさまでした。また25日夜の韓国本・最終編集会議(コアメンバー)には、魯在化夫妻、孔秉鎬、李正連、肥後耕生等の皆さんが集まっていただきました。
 何よりも韓国の新しい友人たちと出会い、国際シンポでは同じ壇上でE.カーン博士(コロンビヤ大学教授、地域通貨タイムダラー創始者)の謦咳に接し、また金信一氏(ソウル大学)をはじめとする韓国・平生教育学会関係の主要メンバーとも会うことができました。旅はよきもの。 
 いまホームページに数枚の写真を入れたところ。手打さんからは早速「参加体験談」を寄せていただきましたが、他の皆さんからも感想・記録など送っていただければ幸い。 (南の風1535号 2005年9月27日)


(7)韓国平生学習フェスティバル開幕式−平生学習都市の選定(手打明敏)
 9月24日、無事、筑波にもどりました。韓国では…(略)…通常では体験できない貴重な経験をさせていただきました。あらためて感謝申し上げます。23日のフェスティバル開会式の体験記をお送りします。
          ◇           ◇                 
 9月23日から26日まで、光明(かんみょん)市を会場に開催された第4回全国(韓国)平生学習フェスティバル・国際シンポジウムの招待講演者である小林文人氏等の一行に同伴させていただき、初めて参加する機会を得た。フェスティバルの期間にはさまざまな催しが開催されたが、他の参加者からも報告があると思われるので、私は、初日の「フェスティバル開会式」について報告することにしたい。
 今回、参加して私が感じたことは、韓国社会が人的資源の育成・活用という観点から平生学習を国家的重点戦略として位置づけ推進しようとしていることであった。
 開会式に先立って18時から市総合体育館でパーティーが開かれ、我々も招待され参加した。招待者は 200名ほどであった。食事を挟み、教育人的資源部長官(日本の文部科学大臣、副総理)や韓国教育開発院長、韓国平生教育連合会長、光明市長などのスピーチが続いた。
 19時からは野外運動場で開会式が行われた。開会式会場には約 2000人ほどの市民がつめかけ、子どもからお年寄りまで各階層によるさまざまな催しがおこなわれ、それに若手のプロ歌手の出演もあり、熱気と興奮のなかで21時30分まで続いた。
 この開会式のなかで、教育人的資源部長官から平生学習都市として選定された都市の市長に認定証が授与された。今年度選定されたのは14都市であり、これまで選定された19都市と合わせると33都市が平生学習都市として選定されたことになる。平生学習都市として選定されることでどのようなメリットがあるのか(かなりの国家補助か)詳しいことは分からないが、いずれにしても、教育人的資源部長官みずから出席し、各市長に認定証を授与する光景をみて、韓国の現政権が平生学習推進に相当に力を入れていると感じた。(南の風1535号 2005年9月27日)


(8)韓国訪問・記録・収受資料リスト(小田切督剛)
 訪問団の皆様;無事に日本にお着きになったでしょうか? 本当にお疲れ様でした。今回の訪問についての評価は、10月7日(研究会)にまとめるとして、とり急ぎ今回の資料のリストと写真数点(略)をお送りします。どうぞ御査収ください。ありがとうございました。
○2005年9月韓国(光明市)訪問
 9月22日(木)〜25日(日)第4回全国平生学習フェスティバル
 訪問者:小林文人、手打明敏、伊藤長和、浅野かおる、金侖貞、小田切督剛
○いただいた資料
(1)富川市平生学習センター(9月22日)
・第2回富川市平生学習フェスティバル『学びの楽しみ、富川を引っ張る力!』2005年10月6〜8日
・富川市平生学習センター『「私は明日のために平生学習しに行きます!」富川市民のための平生学習ガイド』2005年
・韓国教育開発院平生教育センター『地域革新の成功的実行のための平生学習都市マニュアル』2005年
 *ホン・スッキ(平生学習センター)所長より。執筆陣6人の1人
(2)第4回全国平生学習フェスティバル(9月23日)
・第4回全国平生学習フェスティバル『第4回全国平生学習フェスティバル国際シンポジウム−未来に向けた約束、 「人間中心の平生学習社会」』2005年9月23日
・キム・フン『産業社会人的資源開発の事例と今後の方向−ニューパラダイムを通じた平生学習推進現況及び事例−』韓国労働研究院付設ニューパラダイムセンター、2005年
・リーフレット
・簡易ガイドブック
・ガイドブック
・DVD【報道資料集ほか】
・「PLAN」【週間手帳】
・金成洙他『希望の森』芸談、2005年(光明市平生学習院の市民特別講座「分かち合いの森」全8回を編集したもの。富川で1955年から現在まで「プルムウォン共同体」を運営するウォン・ギョンソン氏の講演も収録)
・韓国平生教育学会、韓国教育開発院平生教育センター『2005年第3次平生教育フォーラム−学習国家実現のための平生教育法の合理的改善方案』2005年9月24日
・光明市『2005年市民が住みたい都市・光明』2005年(光明市の市政概要。平生学習についてはp.12に成果、p.38に計画を紹介。p.53の行政組織一覧で局相当の事業所として「平生学習事業所」のもとに平生学習支援課(光明市中央図書館)、ハアン図書館管理課、女性会館管理課の3課を置いていることを紹介。p.20に光明市の未来予想図として横浜ランドマークタワーを紹介)
・聖公会大学校「聖公会大学校−光明市平生学習院受託運営機関」2005年(2006年度新入生募集要綱と大学院募集案内を掲載したリーフレット。新聞放送学科に2002年に入学した歌手ユン・ドヒョンのメッセージなどを掲載)
(3)富川市駅谷1洞事務所(9月24日午前)
・駅谷1洞『住民自治センター運営事例』発行年不明
・駅谷1洞事務所「職員業務分掌」2005年9月13日
(4)富川文化院・富川文化の家(9月24日午前〜午後)
・富川文化院・富川文化の家「21世紀複合文化空間 富川文化の家」(リーフレット)
・富川文化院「富川歴史文化アカデミー(第2期深化課程)会員募集要綱」2005年(リーフレット)
・富川文化の家「富川文化 家族と共に行う(民画の世界)参加者募集」2005年(リーフレット)
・富川文化院「富川文化」第72号、2005年(ペク・スヒョン「富川文化院40年の足跡」、クォン・スノ(富川経実聯事務局長)「市民の江 保護方案と環境親和的姿勢」を掲載)
・蘇鎮燮『富川郷土資料集C−富川の民俗と文化』富川文化院2000年
・キム・グァンムク『富川郷土資料集H−桃の花よ!桃よ!』富川文化院、2002年(富川の市花、市樹である桃に関する文学作品の集成)
・富川文化研究所『富川郷土資料集J−富川歴史文化ツアー』富川文化院、2004年(子どもと大人が話しながら富川の歴史・文化を巡るという構成)
・ハン・サンヒョン『山門を離れ−ハン・サンヒョン第4詩集』図書出版サングァトゥル、2004年
・全国文化院聯合会京畿道支会「富川中里『プンムルノリ』−第15回京畿道民俗芸術フェスティバル」2005年9月2日(2001年にふれあい館コリア文化サークル・パランセクが交流した民俗文化空間ポクサコルマダンが出演。演目と構成、出演者名簿と楽器などを掲載)
(5)その他
・富川市広報用DVD(コリア語のみ。富川市庁総務課キム・ジョンヨル主事より)
・富川市弘報室『一冊で出会う文化都市富川』2002年(2004年発行の第4版。全国平生学習フェスティバルの富川市ブースより)
・社団法人民族問題研究所「民族への愛−親日人名辞典集録予定者1次名簿発表特別号」2005年7・8月号(通巻113号)(富川支部が 2005年8月15日に川崎・神奈川の訪問団と開いた「過去史問題韓日市民懇談会」の報告記事を掲載。pp.30-31)
・京郷新聞 
http://www.khan.co.kr/kh_news/khan_art_view.html?artid=200509260750431&code=940100
 …(以下、略)…      (南の風1536号 2005年9月28日)


(9)国際シンポへの対応−今年の夏の思い出 (小林文人)
 今回の韓国平生(生涯)学習フェスティバル国際シンポジウムへの登壇については躊躇するところがありました。何よりも、日本からの発言はもっと若い世代にお願いした方がいいと思いましたし、あと一つ、基調講演E.カーン博士(アメリカ、タイムダラー創設者)との関係から言えば、地域通貨についての知見や経験をもった人にお願いすべきではないかと思ったのです。これは余計な心配だったのですが。
 小田切督剛さんを通して、正式の招聘状をいただいたのは8月初旬。下旬には発表内容をきちんと文章にして、小田切さんにハングル訳をお願いしなければなければならない。急ぎの日本公民館学会『ハンドブック』や朝倉書店『辞典』づくりの仕事もかかえているし、困ったな、という気持が正直のところ。今年の8月は暑い夏となりました。
 しかし、引き受けた以上は・・・なんとか期待に応えなければならない。与えられたテーマは「市民社会における人的資源開発の事例と今後の方向」、これにどう迫るか。韓国でいまさかんに使われている「人的資源開発」という言葉にもひっかかるものあり。
 思案投げ首の数日。結局、日本の公民館の問題から主題に応えてみようと。主として、二つのことを考えていました。脱兎のごとく書き上げて、誤字・脱字などそのままの原稿を小田切さんに送って、福岡(全国集会)へ。二つのこととは・・・、長くなりますので、次号へ。 (南の風1536号 2005年9月28日)

富川市文化院「文化の家」前にて (050924)



(10)日本の公民館を考える−二つのこと
(小林文人)

 韓国(第4回)平生学習フェスティバル・国際シンポジウムへの報告をどう書くか。8月中旬、「市民たちはどのように学んできたか−日本の社会教育・公民館の歩みを通して−」と仮タイトルを設定して、二つのことを考えていました。一つは韓国のこと、もう一つは、もちろん日本のこと。
 韓国の方々の「日本の社会教育」「公民館」についてのイメージは、概して厳しい評価が多いように思われます。おそらく戦前の日帝時代の歴史認識が背景にあるからでしょう。日本「社会教育」は、国家の比重が大きい、行政主導の流れだ、受け手としての市民、そんなイメージでしょうか。公民館についても、全国的な普及・定着の事実を評価しつつも、質的な水準についてはあまり評価されない。社会文化運動の視点からは、「日本の公民館制度は、結局、失敗だったのではないか」という批判を伝え聞いたこともあります。
 韓国「社会教育法」(1982年)があまり機能しなかった経過も重なって、「平生教育法」制定(1999年)の際に(台湾と違って)社会教育法を廃止したことなども、「社会教育」に対する否定的イメージを感じさせたのでした。
 たしかにある側面の事実を鋭く衝いているかも知れない。しかし誤解もある。社会教育における「自治体」「行政」の積極的な役割についてあまり認識がない(歴史的な経験がない)。市民主導の参画・実践・運動を含めて、トータルな視点から日本の公民館の実像を伝えたいという思いがありました。住民が学ぶ拠点としての公民館の可能性を語ってみたいと。
 あと一つは日本の、最近の公民館をめぐる政策批判の論調について。自治体経営改革や指定管理者制度などについての厳しい分析と評価(もちろん大事な作業)は、論議が深まれば深まるほど、公民館の展望を暗くしてしまっている。厳しい追及が、公民館の未来を悲しませることになってはならない。もっと市民の視点から、実践・運動の事例を通して、公民館の可能性を画き出していく必要がある。実際に未来に向けて公民館イメージを実像化している自治体は少なくないのに。
 そんな思いで、韓国の地で、日本の公民館の可能性を実証的に報告してみようと考えたのでした。紙数・時間に制限あり、不充分な点が残りますが、今年の夏、私の一つの挑戦でした。シンポ・テーマ「未来に向けての約束」というメッセージに励まされるところがありました。このような機会を与えられたことに感謝しています。
 小田切督剛さんのコメント(下記)有り難うございました。もし小林報告(日本語版)をご希望の方はご一報下さい。お送りします。(南の風1537号 2005年9月30日)


(11)未来に向けた約束、『人間中心の平生(生涯)学習社会』 (小田切督剛)
 川崎の小田切です。小林文人先生が韓国で発表された原稿……翻訳しながら、自分の仕事の現在に至るまでの大きな流れ(奔流?)を感じました。他の職員たちにもどんどん回し読みしたいという気持ちでいっぱいです。
 第一に、「社会教育」「人的資源開発」などの概念について率直に韓国側に提起されたことが本当に良かったと思います。1970年代から80年代の韓国の労働運動そして民主化闘争、今もなお使用者側に抗議の焼身決起(自殺)をする労働者たちが後をたたない韓国の現実を知る私には、「未来に向けた約束、『人間中心の平生学習社会』」というテーマを聞いた時、涙が出る思いでした。
 光明市平生学習院のイ・ビョンゴン院長は、「あのテーマは私が考えました。韓国で企業中心のHRD(人的資源開発)理論があまりにも蔓延しているので・・・。いろいろな反対論を説得して説得してまた説得して・・・」と、あのいつもながらのスマイルで語っていましたが・・・。
 「未来」「約束」「人間中心の平生学習社会」。こうした一言一言に込められたメッセージの本当の意味を、韓国のパネリストたちは分かっていなかったかもしれません。分かっていてもあえて知らぬふりをしたのかもしれません。しかし、小林文人先生はそのメッセージにきちんと応える提起をされました。私はそのことも涙が出るほど嬉しいです。
 第二に、公民館の事例を通じて、政府セクターの役割を率直かつ具体的に提起されたことが良かったと思います。光明市平生学習院のブレーンであるコ・ビョンホン前院長やイ・ビョンゴン院長、イム・ジョンア副院長の問題意識に一番合致していたと思います。
 昨年9月に光明市平生学習院が主催した国際シンポジウム(伊藤長和さん発表)でコ・ビョンホン前院長は「平生教育の公的責任化」を問題提起していました。「平生学習都市、宣言から実践へ」という全体テーマとあわせ、政府セクターが平生教育の基盤整備にきちんと取り組む姿勢が足りないと提起したものです。
 第三に、光明ではありませんが、韓国の平生教育関係者の一部が持つ「日本の平生教育は国家主導」という誤解を解いたことが良かったと思います。この論は中央政府と地方自治体を混同して「国家」としている上に、自治公民館など住民主導の動きを無視するという二重の間違いを犯していました。
 裏返せば、日本の自治体や住民の力量を正しく評価していなかったということです。また一歩、同じ土俵で対話する条件が整えられたと思います。本当にありがとうございました! (南の風1537号 2005年9月30日)


ソウル・仁寺洞「山村」にて、前列・魯在化夫妻と(9月25日)




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